ドラゴン桜 21 (モーニングKC)三田 紀房
講談社 刊
発売日 2007-08-23
オススメ度:★★★★
受験ノウハウ本としての価値はあるが、漫画としてはイマイチ 2009-03-17
全巻の評価。
「受験漫画」としてほとんどギャグやラブコメを廃し、かなり真っ当に受験ノウハウの教授に取り組んだ作品。そういう意味では斬新。
もちろん、この漫画のやり方だけで東大に入れると本気で思う人はまずいないだろうが、仮に、この漫画を読んだからと言って受験に落ちるような受験生はもともと勉強不足なだけ。東大入試以前の問題で、漫画のせいにするのはお門違い。あくまで受験ノウハウのひとつとして認識すべき。
勉強法としては「それが出来りゃ誰も苦労しないけどな」という、かなり理想論的な部分が多いが、それでも勉強の仕方や、何か「大事な場面に取り組む際の心構え」など、方法論としてはなかなか参考になる部分もあり、読んでも損になるような事は無いだろう。受験に限らず役に立つ場面もあるはず。
ただ、受験ノウハウが中心なので、ストーリー性や登場人物が醸し出すドラマ性が薄いのは確か。ヘタな画にも好き嫌いは出るだろう。漫画として面白いかどうかは微妙なところだが、とりわけ酷評するほどの内容でもない。最終話はだいたい予想通りの展開。
リアリティを標榜するのならもっと徹するべき 2007-11-26
底辺高校の生徒が一念奮起して東大を目指すと言う点では、なかなかに面白い設定だったとは思います。
しかし随所に実際の東大受験ではありえない(平たく言えば受験に対する知識、認識不足に由来するのでしょう)内容が散見されたのは残念です。例えばセンター足切り点や理科選択科目、国語目標60点など。
漫画ですからエンターテイメント性を重視するならば、これは仕方ないとは思いますが。
最もいただけないのは生徒二人の受験結果。多少なりとも東大受験に関わった方ならお分かりでしょうが、どちらかが合格するならば現実では100%逆の結果になっているでしょう。
読者に夢を持たせるためでしょうが、最期の最期にリアリティを大きく失わせる駄作にしてしまったのは編集者の責任が大だと思います。
ドラゴン桜効果 2007-11-10
以前、雑誌でドラゴン桜が及ぼした効果について述べてあった。ひとつ目は、東大受験には一定のコツがあることが一流中高一貫校や塾以外にも知られるようになった結果、それまであまり東大とは縁のなかった地方の進学校からも東大を目指す子が増えているという点。もうひとつは、超人気の生命医学分野を除くと、いわゆる一流大学の中で、東大と他の大学との人気差が以前より広がりつつあるという点だ。
所詮はおとぎ話である。でも、現代では漫画の影響はとても大きい。「キャプテン翼」を読んだ子がサッカー選手を目指そうとするのと同じようなことが起きるのはありうることだ。それに、お話しとはいえ、東大の先生がコメントを載せたり、実際に用いられていた受験ノウハウが物語の中でいろいろ織り込まれていたりで、少なくとも「巨人の星」や「明日のジョー」よりは中身にずっとリアルな部分があることも否定はできない。
皮肉なことに、いまや大学にいくこと自体は大して難しい時代ではなくなっている。加えて本格的な少子化時代を迎えて人手不足慢性化により就職も買い手市場が続く可能性が濃厚だ。クライマックスを迎えた本書を読みながら、そんな時代に受験のためとはいえあえて勉強に意味を見出し、上のレベルの学校に挑戦する(それ自体が正しいかどうかについては人それぞれ)には、いろいろな動機が必要になるだろうし、このような漫画の果たす役割は大きいなと改めて思った。
そしてそういう視点でみると、本巻でのストーリの流れも多くの読者に対して、ほどよい印象と読後感を残すという点でなかなか良かったのではないかと思う。
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